通信Vol.200(2021年1月)

年末からのドカ雪に見舞われ、正月が雪またじで明け暮れた方も多いのではないでしょうか。先日久しぶりに屋根の雪を下ろそうとしたら、身体が以前のように軽く動かなくて、加齢を感じた今日この頃です。

 

 今回は、掃除の達人といわれる羽田空港清掃員の新津春子さんの言葉から仕事について考えてみたいと思います。羽田空港を「清潔な空港」5年連続世界一に導いているカリスマ清掃員です。教科書にも載るほどの仕事ぶりの新津さんのモットーは“やさしさ”です。使う人のことを思いやり“目に見えない部分”にこそ気を配ります。彼女は「ただ清掃をやればいいというもんじゃないと思う。心を込めれば色んなことも思いつくし、“どこまでできるか”を常に考えて仕事をしている。」といいます。中国生まれの日本人である彼女は17歳で日本に渡航してきて、清掃の仕事を始めます。清掃の仕事は社会的地位が低いと感じ、やる気を無くしていた彼女に当時の上司が言います「もっと心を込めなさい。心に余裕がなければ、いい掃除は出来ない。」 それまで、綺麗に掃除して自分がキレイと思えばいいじゃないかと思っていた新津さんは、ハッと気が付きます。自分がキレイと思うだけじゃただの自己満足だ、お客様が掃除後の状態を見てキレイと思ってもらえなければいけない。技術だけじゃなく使う人の身になって、思いやりと配慮を込めた清掃が必要だと気付いたのです。

 彼女は言います「掃除の現場は自分の家と思って心を込めないといけない。」何度世界一に輝いても「まだまだ頂点じゃない。毎回新しい発見がある。」と言います。「自分も常に進化していかないといけない。」と自分を奮い立たせます。

 どんな仕事でも不平不満を言いながら嫌々やっていたら自分もみじめになるし、周囲にも嫌な思いをさせてしまいます。逆にどんな仕事でも昨日より今日、今日より明日、一歩でも半歩でも前進しようと努力していたら、その人は輝いています。

 

 こんな小話があります。ある人が住む場所を求めて旅をしていました。とある街に入る道端に老人が座っていました。旅人は老人に問いかけます「この先の町に引っ越そうかどうか迷っていますが、この先の町はどんな町ですか?」老人は逆に聞き返します「お前さんが住んでいた町はどんな町だった?」旅人は答えます「それはひどい町でした。人々は嫌な噂話をしたり、人の足の引っ張り合いをしたり、活気も無かった。」老人は旅人にこう言います。「そうか、この先の町も同じじゃよ」旅人は落胆して次の町へと旅を続けました。暫くすると又別の旅人がやってきて老人に聞きました。「この先の町に引っ越そうと思うのですが、この先の町はどんな町ですか?」老人は又聞き返します「お前さんが住んでいた町はどんな町だった?」旅人は答えます「人々は希望に満ちて、活気に溢れとても良い町でした。」老人は答えます「そうか、この先の町も同じじゃよ。」それを聞いて、旅人は意気揚々と町に入っていきました。

 老人はどうして、この二人の旅人に同じ返答をしたのでしょうか?町の実情を知らなかったのでしょうか?いいえ老人はこの町の長老で街の隅々までよく知っていました。でも二人の旅人がそれぞれ以前住んでいた町で感じたように、次の町の印象を持つことは容易に想像がついたのです。

 

 住むところ、周囲の人、仕事に対する感じ方、異性の好みも人それぞれだと思いませんか?自分が嫌いな人でも世間中から嫌われているわけではありません。自分が嫌な仕事だと思っていても、周りの人が同じように感じているとは限りません。自分がいかに目の前の仕事にやりがいを見出すかどうかは、自分自身にかかっています。