通信Vol.105(2013年2月)

立秋を過ぎて暦の上では春ですが、飛騨の春はまだまだ先のようです。下呂の方ではもうすでに花粉が飛び始めたとの情報もあり、春が待ち遠しい半面、花粉症の私はいつ始まるのかとビクビクしています。

今回は自分が子供や部下、後輩達に何を残していくのかということについて考えてみたいと思います。
親が子供に残すものと言えば、お金や財産を真っ先に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。でも親の遺産が多額になればなるほど、遺族の間で争い事が多くなり、子供への愛情が仇になるなんてことも聞きます。

ここで先日、友人から聞いたエピソードを紹介したいと思います。彼女は普段、両親と別居し独り暮らしをしていますが、最近、病院から退院したばかりのお父さんに会いに、自分の仕事の休みの日に実家へ帰っていました。何をするという予定もなかったのですが、前日から降った雪のまたじを病み上がりの父親が始めたのを見て、自分も手伝っていたそうです。自宅前の雪もあらかた片付き「隣家の前の雪も少しかいてあげた方がいいかな・・」と考えていたら、父親が「隣の家の前もかいてやってくれよ」と言ったので、同じことを考えていたのかと思って何だか嬉しくなったという話をしてくれました。ぜんぜん構えることなく、自然体で他人を思いやる優しさがお父さんから娘へとしっかり受け継がれているのです。

子供は親の「言うこと」「やること」を見て育ちます。他人が喜ぶことを考えて行動する親の子供は、どうしたら周りの人が喜ぶかを考えるようになります。親が毎日一家団欒の時間に、その日あった楽しいことを話していたら、子供は大人になることに夢を抱きます。親が毎日、会社の愚痴を言っていたら、会社というところは辛くて嫌な場所だと認識します。
親は子供に「あれをやりなさい」とか「これをしてはいけない」と言って親の言う通りに育てようとしますが、子供は親の言うことやることを見ていてそっくり真似をしようとします。
人間と言う生き物は野生の動物たちと違って、生まれてからある程度大きくなるまで、大人の手を借りなければ生きていけません。意識するしないに拘わらず、大人の行動や考え方を見よう見まねで身につけていく生き物なのです。学校の先生の話によると、子供を見ると大体、親の考え方や行動パターンが見えてくると言います。タレントの神田うのさんがテレビ番組の対談の中で弟に「人に喜ばれることが人生の糧になる」という内容の話をしていました。外交官の父を持つ彼女は、育った過程でそういったモノの考え方を身に付けたのでしょう。

友人が仕事が忙しくて子供を遊びに連れて行けないと嘆いていましたが、彼の子供は「大人は働くもの」「仕事は楽しい」という認識を埋め込まれているので、遊びに行けない寂しさは感じているかもしれませんが、大人になってニートになったり、ホームレスになって生活に困ることは無いでしょう。
目の前の子供の欲求を満たす為に、欲しがるものを買い与えたり、休日に遊びに連れていくのが子供の為なのか、少しくらい不自由をさせても、汗水流して働く親の背中を見せるのが子供の為になるのか、親としての役目と子供からの評価との板挟みで苦しいところでしょう。
自分が何を子供に、部下に、後輩に、これからの若者に残すのかを考えながら発言したり行動していきたいものです。