通信Vol.48(2008年5月)

我が家では、いまだにコタツもファンヒーターも片づけられずにいます。こうして見ると飛騨の夏は本当に短いですね、5ヶ月後には又コタツとヒーターを引っぱり出しているわけですから。

今回は「脳力を鍛えて若返る」と題して少し医学的な話もしてみたいと思います。
脳ミソにも筋肉ってあると思いますか?もちろん腕や足のような筋肉はありませんが、それに相応するのがニューロン神経細胞)のネットワークです。このニューロンニューロンの間で情報を伝達することにより、物事を判断したり記憶したりしています。1個の脳細胞から伸びるニューロンは実に3万個から10万個といわれます。このニューロンニューロンを結ぶのがシナプスという情報伝達物質で、このシナプスこそが脳の正体と言えそうです。

ニューロンが発達し、シナプスが増えると色んなアイデアが出てきたり、今まで出来なかったことが出来るようになったりします。例えば、ある問題を解決しようと試行錯誤を繰り返していたら、ある日突然、天から降って来たように解決方法が見つかったり、スポーツ選手が練習を何度も繰り返すうちに技が身に着くといったことです。よく「技は体が覚える」といいますが、体の筋肉には記憶装置がありませんから体の動きを脳が覚えるということです。試行錯誤を繰り返したり、同じ問題を繰り返し脳にさせるのにはニューロンネットワークを活性化する為に重要な意味があるのです。

子供の頃に学校で勉強するのは、脳を使って脳細胞を活性化させ脳力を鍛えるのにとても大切なことです。だから数学の授業などで、社会に出てほとんど使わない微分積分代数幾何をやる意味があるのです。学校にいる時に脳力を鍛えることによって、実際に社会に出て色んな困難に直面した時に自分で解決する力を養うのです。だからこそ高校では進学する生徒より、卒業と同時に就職する生徒の方が学校の勉強をしっかりやって脳力を鍛える必要があると言えます。

ニューロンは齢を重ねても成長し続け、老衰で死亡する2〜3年前まで成長し続けると言われるように、人間の身体の中でも脳だけは加齢による衰えが少ない部分と言えるかもしれません。よく歳をとると物忘れがひどくなるという人がいますが、記憶をつかさどる海馬という部分は年齢を重ねてからも成長し続けることがわかっています。だから記憶力はどんどん伸びていくわけです。もちろん病的に脳細胞が破壊されていくこともあるのでしょうが、「老化=記憶力の衰退」という固定観念もあるのかもしれません。そもそも子供のころからずば抜けた記憶力を持っていてそれが衰えたのか、もともと今ぐらいの記憶力しか無かったのか、自分自身に問いかけてみればわかるのではないでしょうか。
もう一つ考えられることは、大事なこととそうでないことの分別が出来るようになって、記憶を捨てる能力がついてきたともいえます。子供のころは何が重要な情報かわかりませんからいろんな記憶を脳の中の引出しに大事にしまっているわけです。ちょうど、小さい子供が庭で拾った石ころや貝殻を大事に箱に入れて保管していますが、大人は価値のある物や思い出の品しか大事に保管しないように、忘れていいもの、忘れた方がいいことなどはすぐに忘れてしまいます。例えば、一週間前に食べたおかずの情報はとっておいても意味がないから自分で捨てているのです。

脳力を鍛えるために何かの試験にチャレンジしたり、身体を使って今まで経験したことないものを体験して脳を刺激するのもいいかもしれませんね。