通信Vol.52(2008年9月)

あなたが誰かと一緒に同じ時間を過ごしていても、相手の人は楽しくて短く感じ、あなたは苦痛で長く感じること、あるいはその逆のパターンはよくあることです。すべての人が同じ時間を楽しんでいるのではありません。その時間にどのような感情で意味を見つけ色を塗り、仕上げていくかで人生は変わってきます。これを「時間の意味づけ」と言います。

 どんな悲しい別れも、今の出会いのために必要だったと思える人。また、「あの悲しみがあったから今の幸せがある」と言える人は、時間の意味づけが、とてもうまいのです。自分の人生に与えられた「時間」を大切にしている人です。そんな人は、悲しい出来事も人が人として成長するための、大切な時間に違いないと信じています。つまり、人生のすべての時間は「学び」だと知っているのです。

他人の人生を眺めた時、順風満帆(じゅんぷうまんぱん)な人生を歩んでいる人よりも、波瀾万丈(はらんばんじょう)の人生を歩んでいる人の方に魅力を感じるものです。NHKで放映されていたプロジェクトXも、成功者の陰に幾つもの失敗や挫折が秘められていたからこそ、人々の胸を打ったのではないでしょうか。もしやることなすことすべてうまくいって、成り上がった人がいたならば「太郎さんは、やることすべてが順調で、トントン拍子に成功し幸せに暮らしましたとさ」と一行足らず、数十秒の物語になってしまい、そんな人の人生談を聞いてみたいとは思いません。過去の失敗や挫折があってこその成果に価値があるのです。
事実は小説よりも奇なりと言われるように、私たち自身が主人公の人生ドラマを映画顔負けの、味わい深いストーリーにするか否かは自分次第です。

人は人生のなかで、失望もし挫折も味わいます。誰かに裏切られたり騙されて失意のどん底に落ちたとしても、その中に人生の宝を見つけたならば「あの苦しい経験も今の自分にとって必要な経験だった」と思える日が来るのではないでしょうか。過去にこだわって「あの人と出会っていなければ」と過去を呪うこともあるでしょう。しかし時間が経ち、自分が幸せだと実感できる時が来たならば、つらい経験も今の自分にとって必要だったと思えるはずです。

人生のどん底から這い上がるというのは、何も松下幸之助豊臣秀吉のように社会的に成功するとか金持ちになるということばかりではありません。「今、ここ、自分」が幸せだと思える人が真の意味での人生の成功者ではないでしょうか。
僕は『勝ち組』、『負け組』という言葉が好きになれません。誰が人生の勝ち負けを決めているのでしょうか?勝ったのは収入?社会的地位?名誉?もしこれらが勝ち負けの基準だとしたら無人島に行ったとたん誰もが敗者になってしまいます。
もちろんそれらで勝った・負けたと思っている人もいて当然ですが、それよりも今の自分の持っている仕事、家庭、立場、時間の中で本当に喜べるものを見つけていくことが真の幸せにつながるのでしょう。自分の幸せや不幸は他人が決めるべきものでは無いのです。

今が幸せだと本心から思えたら今までの紆余曲折(うよきょくせつ)も挫折も失敗も今の幸せのためにすべて必要なことだったと意味づけができるのです。
過去の出来事を変えることは出来ませんが、過去のつらい経験を恨みの種にしてしまうか、自分にとって必要な苦い経験だったとアルバムの一ページに出来るかは自分次第です。

そういった意味から言うと過去は変えられるのかもしれませんね。