通信Vol.58(2009年3月)

 今年は例年より半月程早く、花粉症持ちの私の鼻がムズムズして、春の訪れを知らせてくれています。この前節分だと思ったら、もう一か月もすれば高山祭の季節なんですね。季節の遷り変りは早いものです。

 今回は自分の自愛心を高めるということについてお話ししたいと思います。自愛心とは読んで字のごとく、自分で自分を愛する心ということです。日本独特の謙虚さを美徳とする文化からなのか日本人は欧米人に比べて自尊心が低いと言われていますが、自尊心よりも大切なのは自愛心であると思います。
 
東京都教育委員会の調査結果によると、中学生では「自分のことが好きだ」との問いに、「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」と否定的に回答した割合が、中1=57%、中2=61%、中3=52%に上り、全学年で「そう思う」「どちらかというとそう思う」と肯定的に答えた割合を上回った。高校生でも否定的な考えが目立ち、高1=56%、高2=53%、高3=47%だった。
 小学生では、小1の84%が肯定的な回答をしたが、学年が上がるにつれてその割合は低下し、小6では59%となっている。(3月11日産経新聞

 自愛心が低いと他人の自分に対する評価が気になって仕方がありません。少し注意されただけでへこんだり、考えられないような理由で自殺したりします。逆に自愛心の高い人は他人の評価があまり気になりません、何か言われても気になって夜も眠れないということが少ないのです。
わかりやすい例をあげると、神経質な性格のA君は自分の神経質な性格を長所ととらえています。そんなA君に友人のBさんが「そんなに神経質になるなよ、細かすぎると人に嫌われるぞ」と忠告してもA君は全然気になりません。A君は何事にも大雑把なB君よりも、色んな事に細やかな自分が大好きだからです。

 自分のことが好きな人になるには、子供の頃の成長過程で愛情を一杯に受けて育つ必要があると言われていますが、大人になって「自分は愛情を受けて育ててもらえなかった」と愚痴を言っても過ぎた日々は取り戻せません。それなら自分が受けられなかった愛情を、今から自分自身に注げばいいのです。具体的には自分の長所を見つけて自分で褒めることです。実際に声に出して「俺ってこんなところがすごい」「私ってこんなところがすてき」「大好き」「今のままでいいよ」と自分の声で自分に聞かせるのです。他人との相対的な比較ではなく、自分自身の基準でいいので自分の良いところを見つけてみましょう。
自分で愛情を注ぐのが難しかったら、自分の事を肯定してくれる人を見つけてみましょう。友人、恋人、家族、会社の同僚、上司、誰でもいいので自分を肯定してくれる人を見つけるのです。大事なことはあなたの行動を肯定する人ではなく、あなたの気持を肯定してくれる人ということです。行動よりも何故その行動を起こしたのかという気持ちの方が大切だからです。

自愛心と自尊心は似ているようですが全く違う心です。自尊心が高い人というのは実は自愛心の低い人なのです。自己のすべてを愛することが出来ないから、他人に高く評価してもらうことで自分の存在価値を見出したいと思うのが自尊心です。
人生につまずいた時、逆境の時、失恋した時、仕事で失敗した時に自尊心が高い人ほど深く傷つきなかなか立ち直れませんが、自愛心の高い人は立ち直りも早いです。失敗したみっともない自分を誰より愛することが出来れば、これほど心強い味方はありません。自分に愛情をかけることが出来れば他人にも愛情が注げると思いませんか?