通信Vol.66(2009年11月)

 初雪も降り、冬支度をせっつかれているのに中々時間が取れない今日この頃です。皆さんはもう冬の支度を済ませましたか?

 今回は「甘えの心理」についてお話ししたいと思います。
 「甘え」と聞くと幼い子供の「ママーあれ買って」「やだやだ」といった、わかりやすい「甘え」を想像するでしょうか?
 もちろん子供の「甘え」にもわかりやすい「甘え」と、反抗、非行などの分かりにくい「甘え」があります。今回お話しするのは、子供の「甘え」ではなく大人の「甘え」ということについてです。

「私は自立しているから誰にも甘えていません」と思っている人もあると思いますが、自分の気付かない「甘え」で自分自身が苦しんでいるケースもあります。「甘え」とは子供の心理で、自分が望むように周りが動いてくれてあたりまえ、周りの人も自分と同じ思いを抱いていて当然と思う心です。

 子供に対して「どうしてお母さんの言うことが聞けないの!」「どうしてさっさと宿題をやらないの!」「どうしてお手伝いしてくれないの?」と腹を立てるのは、親の「甘え」の心理です。自分の子供に甘えているのです。言葉を変えると「母子同一感」と言いますが、子供は親の思い通りに動いて当然という思いを捨てきれないのです。

 この「母子同一感」は家庭内だけの問題ではありません。職場や友人関係でも同じ問題は起こります。「どうしてこんなことも出来ないんだ!」と上司に怒鳴られたことはありませんか?
「どうしてこんなことも分からないの!」と部下や後輩を責めたことはありませんか?「こんなに頑張っているのに分かってもらえない」と会社や上司に不満を持ったことはありませんか?「こんなに心配してあげたのに、心配して損した」と友人に腹を立てたことはありませんか?
これらはすべて「周りの人も自分と同じ考えを持っている」「周りも自分の思うように動いて当然」という「甘え」の心理です。
 
 自分の「甘え」の心理に気付かないと腹の立つことも多いものです。「どうして腹が立つのだろう?」「なんで怒ってるの?」と自分に問いかけたことはありますか?自分はどうして腹が立ったのかがわかると9割以上は自分自身に問題があることに気付きます。
腹立ちの原因をたどっていくと「自分の期待を裏切った」「自分の想像と違った」「自分の思い通りに動かない」「自分の考えに合わない」といったことに行き着くのではないでしょうか?どれも自分が主語であることに気付きます。
「○○さんが○○と言ったから腹が立つ」という場合も、「○○さんはこんなことを言うべきではない」という自分の勝手な思いの裏切りから起こる怒りです。○○さんは他人ですから、言う言葉を私が決められるはずもありません。

「甘え」を否定しているのではありません。誰でも「甘え」はあるし、何かに「甘え」=「依存」しなければ生きては行けないと思うからです。しかし自分自身の「甘え」に気付かないと他人を責める「他罰傾向」に陥る恐れがあります。誰かに腹が立った時に、少し時間をかけて「なぜ腹が立ったのか」をよくよく考えてみる必要があります。子供が「甘え」を親に許されて育つように、私たちも日々「甘え」を周りの人たちに許してもらって生きています。「自分だけが他人を許して生きている」と思っているならば傲慢以外の何ものでもありません。