通信Vol.81(2011年2月)

 日の暮れる時間がだんだん遅くなって、春の息吹が感じられる今日この頃です。この時期が一年の中でエネルギーに満ちて一番好きかもしれません。目に見えるエネルギーじゃなくて、見えないところにエネルギーが貯まってる感じが好きなんでしょうね。

 先日、ナショナル電器(現:パナソニック)の創始者松下幸之助氏から直接指導を受けた、PHP研究所の虫明正治(むしあけ まさはる)氏の講演を聞いて、ある気付きを得ました。今回はそのことについてお話ししたいと思います。

 起業家で成功者と言えば、日本人で松下幸之助の名前をあげない人はいないと思いますが、彼ほど他人に対する気配りを欠かさなかった人はいなかったそうです。あるエピソードを紹介すると、ナショナル電器創立50周年記念式典への招待客を迎える玄関先での出来事。幸之助さんは自分の立ち位置を確認するため、玄関先の階段を何度も上がったり下りたりしていたそうです。不思議に思った部下が、幸之助氏に理由を尋ねると、お客様が幸之助氏の前でお辞儀をした際に階段の途中だと転んでケガをされるかもしれないと言われて、結局は階段の下の平らなところで招待客を迎えることになったというのです。徹底的に相手の立場に立って物事を考える姿勢に部下たちは圧倒されたそうです。

 また、東京ディズニーランドやリッツカールトンホテルなど一流のサービスと言われる接客や、お客から絶大な信頼を勝ち得ている、サービスや医療・福祉の接遇スタッフを見ると、テクニックではなくて、「心」が大切なんだなーと感心することがよくあります。
 たしかに言葉遣いや笑顔といった、目に見える部分のテクニックは重要かもしれませんが、それだけでは一流のサービスにはなり得ません。アニュアルやテクニックを超えた「心」の部分が客に感動を呼ぶのではないでしょうか?客が「ここまで自分のことを思ってくれているのか」と感じさせるサービスによって、感動のドラマが次々と生まれているのです。

 心のこもったもてなしやプレゼントは本当に気持ちのいいものです。私たちも他人にプレゼントをする時に、自分が気に入ったもの、自分が美味しいと思ったものをプレゼントをすることはありますが、相手の好みをリサーチして本当に相手が喜びそうなものをプレゼントするには、かなり手間隙がかかります。でも手間隙をかけてプレゼントをした時ほど、相手は喜んでくれます。それは、品物よりも送り手の気持ちが伝わるからなのでしょう。

 成功者のマネをしたり、すばらしいサービスを提供する会社のマニュアルをマネてみても、同じような成功ができなかったり、同じような感動が生まれないのは、心の中まで同じに出来ないからなのです。もし心の中まで彼らと同じようになったら、彼らに近い成功をおさめられたり、同じような感動を呼べるのでしょう。      

ところが一般的には、目に見える部分(言葉や行動)だけが重要視されて心の中までは、あまり問題にされません。というより、心の中までは見えないので誰も問題に出来ないとも言えるかもしれません。

 「自分は真面目にやっているのに認めてもらえない」「自分は不運だ」と嘆いている人は、行動や発言よりも自分の心の中で何を思っているのかを振り返ると良いのかもしれません。心で思うことは実際に言ったりやったりすることよりも、何倍もエネルギーがあるといわれますし、先の松下幸之助氏や東京ディズニーランド、リッツカールトンホテルなどの例を見ても、心で思うことが幸・不幸の鍵だといえそうです。