通信Vol.86(2011年7月)

 今年は例年より早い梅雨明けで、一気に真夏になってしましました。それにしても飛騨はマイナス10数℃〜30℃プラスαと一年の気温の幅が50℃近くあるんですね。日本の中でもこんな地域は稀だと思います。でも、飛騨の空気は乾燥していて、温度を見て想像するほど暑さを感じないのも事実です。そんな、さわやかな飛騨が私は大好きです。

 今回は、他人を誉めることの難しさについてお話ししたいと思います。誉めるというとかなり上から目線なので、目下の人や子供に対してしか使いませんが、同僚や目上の人に対しては、感嘆する、感動すると言っても良いと思います。

 人間は元来、自分より劣っている者を見つけて安心する動物のようです。ですから、学校や職場でイジメを撲滅しようとして取り組んでも、モグラ叩きのように後から後からイジメが勃発するのです。部落差別問題も昔からなくならないのは、人間の深層心理に根付いたものだからなのです。ですから他人の欠点はすぐに見つけられますが、長所は見えない(というか深層心理が見ないように命令する)のです。自分よりも優れている者を認めるということは、自分の価値を下げることになるので、自己防衛の本能から拒絶するのでしょう
 
 しかし、自分自身に目を向けてみると、他人から貶(けな)されるより誉められたい気持ちで一杯です。これは万人に共通することではないでしょうか?ここで大きな矛盾が生まれます。自分は誉められたいのに、他人は貶したいという自己矛盾です。でも殆どの人がこの自己矛盾に気付きません。何故これが矛盾なのか?というと、それは自分は相手にとっては他人だからです。何を当たり前のことを言っているのか、と思われるかもしれませんが自分と他人を第三者的な観点から見ることが出来ないと、この当たり前のことが理解できないのです。

この矛盾が中々理解できないから、自分は誉められたいのに他人を貶すのです。「貶す」というと大げさですが「そんなことも知らないの?」「そんなやり方じゃだめだよ」「あの人が総理じゃまとまらないよ」というたぐいの言葉を使うことはありませんか?

 自分がして欲しいことを他人にしてあげる、自分がして欲しくないことを他人にはしない、というのが円満な人間関係を築く上で重要なことです。

 ここで「誉める」、「相手を称賛する」ということと「貶す」「バカにする」ということを自分の気持ちと対比しながら整理すると「誉める」「相手を称賛する」=「自分はしたくないこと」
「貶す」「バカにする」=「自分がやりたいこと」ということになります。
つまり「相手がして欲しいこと」=「自分はしたくないこと」で「相手がして欲しくないこと」=「自分がやりたいこと」ということなのです。

 他人との関係を上手に築く為には、「自分がしたくない気持ち」を抑えて相手を誉める、感嘆する、感動するという努力が必要になりますし「自分がやりたい気持ち」を抑えてバカにしない、貶さないという自己抑制が必要となってきます。

 でも他人を誉められないからと言って落ち込まなくてもいいんです。パレートの法則(注*)によれば、10人の人がいたら「誉める口癖の人」が2人、「貶す口癖の人」が8人という割合で存在するはずですから。
難関ですが、私は努力して誉める人になりたいです。

注*:パレートの法則…2:8の法則ともいわれ、自然現象や社会現象が2:8の割合でバラつき、偏りがあることを発見したイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートにちなんで名付けられた法則。