通信Vol.108(2013年5月)

 ついこの前まで、寒い寒いと言っていたのが嘘のような汗ばむ陽気が続いています。一気に衣替えの時期になってしまいましたね。
 
 今回は物事の表裏について考えてみたいと思います。コインに表と裏があるように、全ての事に表と裏があります。商売だけではなく人間の作った仕組みや、人の心も同様です。これがわからないと表だけ見て裏が汚いものだと思ったり、裏だけ追いかけて表の無いドロドロの世界になってしまったりします。

これについて少しずつ検証してみたいと思います。例をあげれば海外の発展途上国に対する、政府の海外援助もその裏には開発後の利権がからんでいますし、震災のボランティアと言っても誰にも評価されないと続けられません。難病を奇跡の手術で助けるスーパードクターも無報酬では出来ないでしょうし、偉人・聖人と言われる人たちも、ケンカもすれば毒も吐きます。

理想を求めることは大切なことです。理想とは大義名分です。コインで譬えるなら表にあたるものです。例えば仕事をする為の大義名分は何でしょう?大義名分とは終始一貫して変わらないものです。これがないと、仕事は続きません。

家のローンの為や家族を養う為に仕事をすると言う人がいますが、ではそんな人に質問です。ローンが終わったら、家族を養う必要が無くなったら、働くのをやめますか?もちろんローンの為、家族を養う為に働くことを否定するわけではありませんが、働くことの表と裏をしっかり認識しないと、仕事を続けたいのに何故か続かないというジレンマにおちいりやすいのです。

働く為には大義名分がないと歓びが続きません。表の部分はとても大切です。列車に譬えるならばレールの部分です。ローンや誰かを養うというのは金銭の部分です。これは働くことの裏の部分です。列車に譬えるならば動力の部分です。レールが無かったら列車は走れませんし、動力が無くても同じように走ることは出来ません。どちらもとても大切なことです。

自分の心に当てはめてみると、自分はまだまだだと謙遜して向上する表の部分と、今の自分に満足するという自己肯定感=裏の部分が両方バランス良く備わっているとバランスの良い精神状態を保つことが出来ます。他人にバカにされても自己肯定感がある人は、「自分はこれで良いんだ」と立ち直れますし、他人に褒められても向上心のある人は「いやいやまだ上がいる」と謙虚に受け止めることができますから傲慢にはならないでしょう。

表の部分ばかりを見ていると他人が悪人に思えてくるし、裏の部分ばかりを見て生きていると他人から避けられるようになってきます。どちらもとても大切なのですが、裏も表も大事と認識することが大切なのです。他人を見ていて、自分と違うなーと感じたら、多分自分とは表と裏を見る配分の違う人なのです。人はそれぞれ顔かたちが違うように、物事を見る感覚も十人十色です。自分と違う見方をする人がいてもそれはそれで受け入れましょう。大事なのは自分がどういう配分で物事の表と裏を見るかです。