通信Vol.110(2013年7月)

今年は例年より早く梅雨が明けたと思ったら、記録的な猛暑が続いています。何をするにも熱中症に注意しましょう。
 
 今回はトラウマということについてお話したいと思います。本来トラウマとはPTSD(Posttraumatic stress disorder)といって心的外傷後ストレス障害の名称から由来しています。死を予感するような事故や重篤な怪我を経験した後に、不眠やフラッシュバックのような後遺症に悩まされる症状を言いますが。日常的にあの人の一言がトラウマになっているとか、お客さんに怒鳴られた事がトラウマになっているというような使い方もしますね。

 ところで私達の記憶は、どこまで正確に事実を覚えているのでしょうか?
 私達は自分の記憶が、あたかも確固たる事実であるかのような認識を持っていますが、自分が覚えている事象を、一緒に体験した友人や家族に記憶の検証をお願いしてみると、自分の記憶がいかにでたらめで自分の都合の良いようにでっち上げられたものかわかるでしょう。
 私達の思考は、基本的に「記憶」を基に組み立てられます。過去に見たこと、聞いたこと、体験したこと、言われたことなどの記憶をもとにして物事を判断したり、行動したりします。よく重大な事故にあった瞬間、記憶が走馬灯のように駆け巡るという話を聞くことがありますが、とっさの時には脳がフル回転して、過去に経験したことから現在直面している事象を解決する方法を一瞬で検索しているからなのです。

 でも実は私達の「記憶」はほとんど嘘です。何故かというと私達の記憶はビデオカメラのような記憶ではなくて、楽しかったとか、悲しかった、綺麗だった、気持ち良かったという感情を基に、その都度映像を合成して作りだしているので、時間がたつとなおさら自分の都合の良いように記憶に感情を付け足しして、映像もリメイクしているので残っている記憶は、現実とはかけ離れている自己中心なもので固められています。いわゆる「ねつ造」「改ざん」された記憶に振り回されて生きています。
 自分の過去を相手に話した時に、自分の事を尊敬してくれるように、愛してくれるように、気にかけてくれるように、ウケるように、「盛って話す」こともしばしばあります。話が盛り上がれば盛り上がるほど、事実とはかけ離れた話が実際の経験であるかのように、自分の脳にも焼き直しされて記憶がどんどん書きかえられていきます。つらい記憶も他人に話すうちに、どんどん自分で自分を何度も痛めつけてより深く傷ついていきます。楽しい出来事を話せば何度も楽しい気持ちが味わえるし、悲しい出来事を語れば反復して何度も傷つきます。ちょうどスルメを味わいながら噛みしめるようなもので、自分で記憶を何度も引っ張り出して体験を重ねているようなものです。
 
 誰でもつらい体験をして傷つくこともありますが、楽しい体験で幸せだったということもあるでしょう。つらい体験を何度もリピートするよりは、つらい中にも「良かった」といえる事をさがしてその部分を増幅させれば、過去の記憶は書き換えられます。また良かったと思える記憶はなん度でも呼び出して、自分の都合の良いように盛ってどんどん楽しい記憶に書き換えたらいいんです。誰も貴方の頭の中の記憶まで「間違っている」なんてケチをつけることは出来ないんですから。喜びに満ちた記憶が増えてくれば、自然とプラス思考になってきます。