通信Vol.112(2013年9月)

 夏の初めに渇水で困っていた地域も大分潤っているのでしょうか?それにしても猛暑とか豪雨とか極端な天候が多いですね。天災などがあるのはいつの世でも同じなんでしょうが、近年特に多い気がします。地球に不満をぶつけてもしょうがないので、いかにこの気候を乗り越えて次代を生き抜くかを考えていきたいものです。

 さて今回は「楽」について考えてみたいと思います。
「楽」という字を見て「らく」と読みますか?それとも「たのしい」と読みますか?送り仮名がなければ「らく」と読むのが普通でしょう。
 どちらとも読めますが「楽(らく)」と「楽しい」では全く中身が違ってきます。
 「楽」とは、苦しいことの反対です。例えば大きな荷物を持って階段を上がったが、中身がスポンジだったので軽くて楽だったとか、風邪をひいて高熱が出たが薬を飲んで楽になったというような具合です。自分で「苦」か「楽」かを選べることもありますね。大変な仕事はサボって楽な仕事ばかりを選んだり、大変な役回りは断って楽な下っ端で居続けたり、「楽」をしようと思えばどんな場面でも楽は出来ます。
 では「楽しみ」はどうでしょうか?楽しいことって人それぞれです。同じことを経験しても、楽しいと思う人もいれば、全く楽しくない人もいます。楽しみって客観的な状況ではなくて、個人が心で感じる主観的な感情です。分かりやすく言うと、楽しい状態って誰かが作ってくれるものではなく、自分で楽しいと感じられるものなんですね。
 人によって差はあるでしょうが、私の場合は遊んでいる時よりも、仕事で苦しい思いをして切り抜けた時の方が、「楽しさ」を感じられるような気がします。遊んでいたり、楽な仕事をした後は「楽しさ」はそれほど感じられません。

 山登りをしたことがある人ならば誰でも感じるでしょうが、大変な思いをして北アルプスのような高い山を登った時の方が、松倉山に登るよりもずっと感動するでしょう。苦しい時間が長ければ長いほど達成した後の楽しさは格別です。山登りやスポーツは練習などで先にしんどい思いをした方が後で楽しいと誰でもわかることなのですが、仕事となるとどうでしょうか?出来ることなら面倒くさい仕事は他の人にやって欲しい、自分は楽で美味しい仕事だけを選んでいきたい、きまった仕事だけやって辛い仕事や新しいことにはチャレンジしたくない、でも給料は上げて欲しいし昇進もしたい。これって矛盾していませんか?自分がお金を払って人を雇う場面を想像してみたら分かると思いますが、要領が良くて楽ばかりしたがる人と、自分から率先して他人の嫌がる仕事をする人では、どちらの人に多く給料を払いたいと思いますか?

 勘のいい人ならばもう気付いているかもしれませんが、「楽」の先に「楽しみ」はありません。「楽しみ」は「苦」の先にあるのです。世の中で働くことを考えてみると、人の嫌がる辛い仕事を率先してやったり、自分が苦しいと思っている仕事をやった先に、充実感とか、給料・ボーナス、社会的信頼や家族の尊敬といった「楽しみ」が待っているのではないでしょうか?「苦」のタネをせっせと蒔き続けた人にだけ「楽しみ」の花が咲きます。これは誰にも邪魔出来ないし、タネを蒔いた人にしか分からない「楽しみ」です。どんな花が咲くかは後の「お楽しみ」です。目先の苦に負けずに「苦」のタネを根気良く蒔いて、後で沢山咲く「楽しみ」の花見を盛大にやりましょう!