通信Vol.113(2013年10月)

 もう10月だというのに、夏日がぶりかえしたりして気分が中々冬支度に向かいません。皆さんは冬に向けて何か準備されていますか?子供の頃イソップ童話のアリとキリギリスの話を聞いて、前もって準備する大切さを感じ取り、アリのようにならなくてはと自分に言い聞かせながらも、いつまでたってもキリギリスのような性格は中々なおりませんね(笑)
 
 今回は自分の失敗から学んだ「ウソのすすめ」をお話ししたいと思います。「ウソ」と聞くと大概の人は「悪いこと」と連想するでしょう。現にウソで人をだましてお金を巻き上げたり、他人を不幸にするウソや、失敗を隠すためのウソ、都合の悪い事実を隠すウソなどは、やがては身を滅ぼすことにつながるウソです。たいていの人は子供のころから、こういう悪いウソをつくと親や先生からこっぴどく叱られ、ウソは悪いことと認識させられて育ってきました。

 でも今回おすすめする「ウソ」は他人をハッピーにするウソです。「ウソ」で人がハッピーになれるのか?って思う人もいるでしょう。でも良く考えてみると誰でもお世辞やヨイショで他人を持ちあげた経験はあるでしょう?「そのネクタイお似合いですよ」「今日は笑顔が素敵ですね」「仕事が出来る人は違うね」「すてきな洋服服ですね」・・・本心から出た言葉なら「ウソ」とは言いませんが、心で思っていないのに相手を喜ばせようと思って出た言葉なら、正真正銘の「ウソ」です。ただし相手を幸せにする効力のある、褒めるべき「ウソ」です。

 お世辞以外にも相手を思いやってつく「ウソ」もあります。ガン患者にガンであることの告知を行う場合と、ウソをついて知らせない場合では、告知された方が寿命が短くなるという統計データがあります。真実があまりに残酷な場合、本当のことを知るよりも知らないことの方が幸せなこともあります。相手のことを思いやってつくウソは寿命をも延ばすことがあるのです。

 またこんな場合はどうでしょう。子供がお父さんに向かって「お母さんが、お父さんのこと大好きだって」(子供の作り話です(笑))お父さんはそんな言葉を聞いて不愉快にはならないでしょう。本当は普段から子供の前で、妻は夫の悪口ばかりを子供に話していて険悪なムードが家庭内に流れていたとしても、子供のウソによってちょっとだけ夫婦の間に和やかな空気が流れます。ウソが潤滑油の役目を果たすわけです。社内で同僚に向かって「Aさんがあなたの事を仕事が早いって誉めていたよ」(これも作り話です(笑))本当はAさんが同僚の悪口を言っていたのを耳にしたのですが、ウソを言ったわけです。これを聞いた同僚は、普段のAさんの態度からAさんが自分のことを褒めるなんてにわかに信じられないのです。しかし、同僚の口からAさんが自分のことを褒めていたと聞くと悪い気がしなくて、Aさんに対する不信感も自分の思い過ごしだったのかと反省します。逆にAさんに対して親近感を持って接するようになり、それにつられてAさんも同僚に対して優しく接するようになったりします。ウソから出た真実ということわざもあるくらいです。

事実をそのまま伝えることが必ずしも良いこととは限りません。同じ言葉を聞いても自分の受け取り方と、他人の受け取り方では感じ方が違います。自分が聞いたままの言葉を伝えたつもりでも、自分の感情で言葉に色をつけて相手に伝えてしまいます。事実を伝えることよりも大切なのは、自分が伝える言葉によって相手をどんな気持ちにするかでしょう。