通信Vol.123(2014年8月)

お盆を過ぎると一気に涼しくなり少し寂しい感じがします。寝苦しい夜も数日過ぎると秋の虫が鳴き始めますね。飛騨の夏は短くて、追い立てられるように秋に突入です。

人は大きく分けて男性と女性に分けることが出来ます。それぞれが母性と父性を大なり小なり持っていると思うのですが、今回は母性と父性について考えてみたいと思います。

 母性と聞いて一番初めに思いつくものは何でしょうか?一般に母性本能というと女性が本来持つとされる性質で、子供や年下の者,または弱者を守り,育てたい,という強い願望をさすことが多いです。この本能が強い人を母性の強い人と呼ぶことができそうです。実際に子供がいるか否かは関係なく、他人の子供や成人に対しても母性は働くようです。 

アメリカ海軍には「空母」と言って甲板の上に滑走路を備えて飛行機を離着艦させることの出来る大きな船があります。飛び立った飛行機が還ってこれるがゆえに「空の母」と名付けられたのでしょう。同様に船の本拠地の港を母港と呼んだり、出身校を母校と呼ぶのも、出ていったものが帰れる場所という意味合いを含んでいるのでしょう。

人にとって母性とは何でしょうか?どんな人にも母親が必ずいます。極悪の殺人鬼にも母親は存在するのです。実際の母親が自分にとって母性として作用しているか否かは別として、望むべきは何があっても無条件で受け入れてくれる存在としての母性ではないでしょうか?人生に失敗しても、つまづいても、間違いを犯したとしても、無条件で受け入れてくれる人がいる者は救われます。
血のつながった母親が母性を発揮できなくても、誰かが母性を持って見守っていてくれたら、人は真っ当に生きられると思います。たとえ生き別れ、死に別れたとしても、一度でも母性をかけられた人は、記憶の中でその母性を拠り所として生きられるのです。

会社の中で母性を考えたときに真っ先に思い出すのは、20代の頃のアルバイト先での良き先輩社員の存在です。男性の身体にも女性ホルモンが存在するように、男性の中にも母性はあると思います。自分より八つ年上で社員だったその男性は、私が失敗してもそれを咎めずに、褒めて育ててくれました。そうなると私もそれに応えようと、サービス早出、サービス残業で一生懸命働きました。一生懸命やれば受け止めてもらえる安心感が仕事の原動力でした。

母性と並んで父性も大事なのですが、自然界では母性ほど重要視されません。しかし集団の中では父性も大事な要素だと思います。
父性とは、暖かい眼差しで見守りながら、ルールから逸脱した時に叱るような存在です。ボス猿のように、集団の規律を守るのが父性といえます。見守る姿勢は母性とよく似ていますが母性と決定的に違うのは、ダメなやつも見捨てないということだと思います。母性は一定レベル以下になった人を見捨てます。弱者を切り捨てることによって強者の生存を守る意図があるので重要なのですが、時として冷酷に映ります。
家庭内でも会社内でも母性と父性の役割分担や使い分けが大切です。