通信Vol.145(2016年6月)

今年は、雪も少なかったし雨もあまり降らず、各地で水不足が心配されています。たのみの綱の台風も今年はまだ一つも観測されていません。早くまとまった雨が降るといいですね。

 今回は「自分の心を見つめる意味」と題してお話ししてみたいと思います。
 人の悩みの80%は人間関係の悩みだとも言われます。そんな人間関係の悩みを解決する鍵が実は「自分の心を見つめる」ことに隠されているのです。どういうことか具体的に例をあげながらお話ししましょう。
 私が学生時代アルバイトをしていた時に、とても苦手な上司がいました。几帳面な上司は、物事を感覚的に進める私と対照的ですべてに根拠を求めてきました。
上司「その教材の発注量はどこから導き出した?」
私「なんとなく今までの流れで」
上司「なんとなくじゃなくて、どれだけ出荷するか考えないとね」
私「すみません・・・・」心の中では(足りなくなったら近くの支社から借りれば良いじゃん)と反発していました。
 すべてに根拠を求められた私は窒息寸前になって、アルバイトを辞める意思を伝えた途端、上司が異動になって人間関係の問題は解決しましたが・・・
この場合、私の悩みは「すべてに細かい上司」だったのですが、実はこの悩みの本質的な問題は「私が何故、理論に基づいて仕事をしようとしなかったのか?」という点なのですが、理論づけをするのが面倒だったのか、あるいは自分と性格の異なる上司に反発していたのか、今となってはハッキリわからないのですが、とにかく自分の中で意地になっていた部分が認められなくて「上司のせい」にしていたのです。もしこの時に自分の内面を見つめる技術が身についていたならもう少し違った人間関係を築けたのかもしれません。
 も一つ私の失敗談を披露いたします。20代の頃、理科教材の営業をしていた時の社長が強烈な人で、面と向かって叱られることは少なかったのですが、夕方仕事が終わる頃に社長室に呼びつけられ、私の上司の悪口を4時間ほど聞かされるのです。社長はイスに座って、私は立ったままです。自分のことを叱られるのならまだしも、なぜ社長の愚痴を4時間も立ったままで聞かなければいけないんだろうと思いました。この社長のことは嫌いというよりも、すごく苦手な人でした。会話らしい会話をした記憶があまりありません。この場合の問題点も「疑問に思うことを何故社長に直接聞かないのか」という点に極まると思います。本来ならば、社長と話し合って自分が疑問に思うことをぶつければ良かったのですが、苦手意識が先に立って社長の言動を上げ足をとって「やっぱりあの人はおかしい」「だからみんなに嫌われて当然」という自分の思いに合致した社長像を創り上げていったのです。
 心理学者のアルフレッド・アドラーは「人は目的を果たすために、思考や行動を整える」といいます。誰かを嫌いになると、その相手に嫌われるような言動を作り出し、相手にいやな態度をとらせて「やっぱりあの人のここが嫌」という逆説的な論理を確定的なものにする生き物だということです。分かりやすく言うと、嫌いな相手がいるとわざわざ嫌われるような状況を自分から作り出すということです。
 人間関係を劇的に良くするたった一つの方法は、相手の事を好きになることです。好きになれないのは何故なのか?自分の心と対話が出来ないと、相手が好きになれない本当の理由が見えてこないのです。自分の心の中にしか原因はないのですから。