通信Vol.68(2010年1月)

今年は思いもよらない大雪で、暇さえあれば雪かきの毎日です。皆さんの家の周りは如何ですか?
今回は布施ということについてお話しします。布施とは親切や財を他人に施すということで、色んな宗教で布施の精神は説かれています。
なぜ布施が大事かと言うと、世の中には「因果の道理」というのがあり、良い行いも悪い行いも、全ての行いはやがて自分の幸・不幸という形で自分に返って来るから、幸せになりたいと願う人には必要不可欠な行為だからです。
昔、仏教を説かれたお釈迦さまが、お弟子数人を連れて托鉢(一般の人に布施を勧める行)をして歩いていた時に、ある貧しい村の入り口にさしかかりました。弟子の一人が「この先の村は非常に貧しい村です。托鉢をしても誰も布施をしないでしょう」とお釈迦さまに進言すると、「貧しい人達の村だからこそ、布施を勧めに行かねばならない。現在、物やお金が無くて苦しんでいる人達は、過去世において布施をしてこなかったのだろう。今、布施をしなかったならば、未来又貧しい世界に生まれて苦しまねばならない。」と諭されたと言われています。卵が先か鶏が先かという議論がありますが、無いから出さないのではなく、出さないから入って来ないということなのです。
又、仏教では布施をする相手についても「三福田」として教えられています。女性の気を引こうとプレゼントや食事をご馳走する行為は布施とは言いません(笑)。
「三福田」とは次の三つです。「敬田(きょうでん)」・・敬うべき徳を備えられた方、「恩田(おんでん)」・・ご恩を受けた方、「悲田(ひでん)」・・気の毒な人。布施の相手を田んぼに例えられるのには理由があります。それはちょうど、田畑にまいたタネが何倍もの収穫となって返ってくるように、三福田に布施をすれば、その福徳は布施をした人のものになり、やがては大きな幸せの実を結ぶからです。

ではお金や財産を持たない人は幸せになれないのかというと、そんなことはありません。仏教では、財や物を施すだけでなく財産を持たなくても出来る、「無財の七施」というのを教えられています。
1.眼施(げんせ)・・・優しい、温かいまなざしで周囲の人々の心を明るくするよう努めるこ
と。その目にたたえられた和やかな光は、どんなにか人々を慰め励ますでしょう。
2.和顔悦色施(わげんえっしょくせ)・・・優しい笑顔で人に接することをいいます。笑顔
 は周囲全体を和ませ、トゲトゲしい対人関係をスムーズにします。
3.言辞施(ごんじせ)・・・優しい言葉をかけるように努めること。心からの優しい言葉はど
んなに相手を喜ばせるか、計り知れないものがあります。
4.身施(しんせ)・・・肉体を使って人のため、社会のために働くこと、いわゆるボランティ
アです。
5.心施(しんせ)・・・心からの感謝の言葉を述べること。相手を思いやること。「ありがと
う」「すみません」ちょっとした言葉が相手の心を癒します。
6.牀座施(しょうざせ)・・・場所や席を譲り合う親切をいいます。車を運転している時な
 ら歩行者や他車に道を譲ることになります。他人から譲ってもらったときは、何とも気持ち
 の良いものです。
7.房舎施(ぼうしゃせ)・・・求める人、尋ねてくる人があれば一宿一飯の施しを与え、そ
の労をねぎらう親切をいいます。

普段の小さな心がけ次第で自分の未来は、幸福になるか不幸になるか大きく変わります。飛行機の針路が1度ずれただけで、数千キロ先では大きなズレとなるようなものです。