通信Vol.182(2019年7月)

 昨年と比べると、ほどよい降雨があって梅雨らしいといえば梅雨らしい今年の7月です。先日は会社の近くで落雷があり、玄関のLED照明が2基も壊れてしまいました。皆さんの周りでは被害はありませんでしたか?普段当たり前のように自然の恩恵を受けていますが、ひとたび荒れると自然の猛威って本当に怖いですね。
 今回は、人と人の間のパワーバランスということについてお話ししてみたいと思います。人間間のパワーバランスということを聞いたことが無い人がほとんどだと思いますので詳しく説明します。自分と誰かが会話するときの、自分と相手の心のパワーの総量を100とすると相手が80出せば、自分は20になり、自分が50出せば相手が50になるというように、大まかに言うと自分と相手の心のパワーが足して100になるように調整する機能が我々の心に備わっているという話です。
 誰かと2人で話をするときに、相手がめちゃめちゃ元気良くてよく喋る人だと、自分は傍観的に相手の聞き役になってしまったり、逆に無口で引込み思案な人だと自分は饒舌になったりします。とてもおしゃべりな人同士で喋っている場合は、時間ごとに入れ替わっています。これは親子や夫婦であっても同じです。おしゃべりなお母さんの子供は口数が少なかったり、話し上手な男性の奥さんは大人しい人だったりします。大人数の会議なんかでも、このパワーバランスの分配が見られます。誰か特定の人が喋りすぎると発言する人が少なくなったり、口数が少なくなったりします。客観的に考えても、同時に2人以上の人が喋ることはありませんから、誰かが60分のうち30分喋ったら、残りの人数で30分をシェアするのですから、当然といえば当然です。
 それがどうしたの?と思われるかもしれませんね。もちろんそんなことを四六時中気にしていたら人間関係に疲れてしまいます。でもこのパワーバランスを気にしなければいけない時があります。それは子育てや人を育てるといった場合です。自分が相手の領域に踏み込んであれこれ世話を焼きすぎた場合はどうでしょうか?ある問題を解決する場合に、相手にアドバイスをしすぎる関係を築いてしまうと、相手はあなたに問題解決の助けを求めるようになって自分で解決しようとする力をセーブするようになってしまいます。学校や会社で自発的に課題を見つけられない「支持待ち癖のある子(人)」は多くの場合、指示をしすぎる親の元で育てられたケースが多いのです。
 相手の心のパワーが弱っている時に色々アドバイスをして話しかける行為は、逆に相手のパワーを落としてしまいます。ではどうすれば相手がパワーを出せるようになるのかというと、相手が徐々にパワーを出すのをひたすら待つのです。よくある失敗例は、相手のパワーが出てくる前に痺れを切らして、こちらから色々話しかけたりアドバイスをしてしまうことです。沈黙が怖いのかもしれませんが、その「沈黙」こそ相手の心が成長する糧なのです。他人の話を聞いている時は、話の内容を整理して記憶する為に脳を使います。自分がのべつ幕無しに喋っている間、相手は話の内容を整理して記憶することに集中しています。いや他のことを考えているのに話を聞いているフリをしているのかもしれません。 
そんな時の心のパワーは省エネモード、アイドリングストップ状態です。自分の言葉で喋るときに初めて思考を整理し脳を使うのです。頻繁にアドバイスを求めてくる人は、自分の脳のパワーを抑えて常に省エネでいたい人なので、相手の求めに応じすぎると相手のためになりません。そういった意味でもパワーバランスを意識することは重要です。