通信Vol.199(2020年12月)

日に日に寒くなってきました、冬の足音がそこまで聞こえています。まだまだ我が家の冬支度(雪囲い)が済んでいないので、少し焦っています。

 

 今回は自己受容と自己啓発ということについてお話ししたいと思います。自己受容とは現在の自分の状態を受け入れて、ありのままの自分を受け入れるということです。自己啓発とは、現状の自分に満足せず、より高みを目指す、高い目標に向かって努力するということです。ある人は現状のままでいいよ、ありのままの自分を受け入れなさいと言い、またある人は、現状に満足したら成長しない、より高みを目指しなさいと言います。一見すると全く真逆のことを言っているように聞こえます。どちらを選んだら心穏やかに居られるのか、どちらを選ぶのが自分のために良い選択になるのか、迷う人も多いと思います。

 この二つは、どちらか一方に着目するともう一方を忘れがちなのですが、どちらも重要だと思っています。自己を受容することで地に足がついて、より高みを目指すことができるということです。自己受容を抜きにして、自分に高い目標を作って努力しようとしても楽しむことが出来ません。なぜなら自己啓発とは現状の自分を否定するところからスタートするので、自己受容しないで自己啓発にとりかかると、自分を否定的な視点でしか見られなくなって不健全な精神状態となるからです。

 自分の心をトランシーバーに譬えると、自己受容に必要なのは受信機、自己啓発には発信機が必要ということです。自己受容するためには、自分を肯定的に観る情報を集めるために受信機の感度を上げなくてはいけません。感度の悪い受信機では、「声なき声」を聴くことが出来ません。「声なき声」とは、自分が周囲の人から愛されている、感謝されているという思い込みにも似た感情ということです。発信機というのは、自分から他人に向けて情報を発信するという意味ではなくて、自分から社会に対して何かアクションを起こすということです。

 ボランティア活動を例にとって、トランシーバーの受信機と発信機の役割を解説してみたいと思います。貴方が人知れず朝早く自宅近所の清掃活動をしていると仮定してください。朝早いので誰も見ている人はいません。このとき貴方は受信機の感度を上げて、地域の人たちが自分に感謝している感情を受け取ります(勝手な思い込みです)。その感情を燃料にしてさらに清掃活動に取り組むのが送信機の役割です。受信機の感度が悪いと他人から感謝されていると思えず、清掃活動に取り組む意味を見いだせません。

 この受信機の感度をあげて「声なき声」を聴くこと、かってに良い感情を受け取ることこそが自己受容で一番大切なのです。自分は周りから愛されている存在なんだ、自分に関わったみんなが自分を好いてくれている、自分に感謝してくれている、社会に貢献しているというプラスの思い込みを増やすことが受信機の感度を上げるということです。

 自己受容が出来たなら、他人に向けて与える余裕ができたり、多少の失敗も他人からの批判も乗り越えられるだけの精神力が身に付きます。「自分を愛する程度にしか他人を愛せない」(カレン・ホーナイ)と言われるのはこのためです。受信機の感度が低いと、自分は愛されていないとか認められていないと他者に責任を求めます。他者からの声が聞こえないのは、他者が発信していないことが原因でなくて「声なき声」を聴く自分の受信機の感度が原因なのです。自己受容できたなら、自分を奮い立たせて高い目標を目指すのも大事なことです。