通信Vol.211(2021年12月)

先日ZOZOタウンの創業者の前澤友作氏がロケットに乗って宇宙へ旅立つ動画が中継されていましたが、海外旅行に行く感覚で宇宙へ行く時代がもうじき来るのかもしれませんね。

 

 今回は何事にも表(メリット)と裏(デメリット)があるというお話をしたいと思います。

 先日ある人から、人生のどんなつらい体験でも必ずその出来事が起こったことでメリットを得られているはずという話を聞きました。

 東日本大震災津波で家族も家も失ってしまった人も何かしらのメリットを手にしているということです。逆に人がうらやましがるような出来事にも影の部分があります。宝くじに当たった人が、浪費癖がついて数年で破産してしまったというような話を聞いたことがあるでしょう。

 コインに表と裏があるように、どんな出来事にも表と裏が必ずあります。中国の故事に「塞翁が馬」という話があります。次のような話です。

「中国の北のほうにお城がありました。そこに住むおじいさんの馬が、ある日逃げ出してしまったのです。逃げ出したことを知った近所の人々は、おじいさんを慰めました。

しかし、おじいさんは「このことが幸運を呼び込むかもしれないよ」とあまり気に留めていませんでした。しばらく経ってから、なんと逃げた馬が戻ってきました。しかも、たくさんの馬を連れて戻ってきたのです。

近所の人々は喜びましたが、おじいさんは「このことが禍(わざわい)になるかもしれないよ」と言うのです。しばらくすると、おじいさんの息子がその馬から落ちて怪我をしてしまったのです。

近所の人々がお見舞いに行くと老人は「このことが幸運を呼び込むかもしれないよ」と言いました。

やがて戦争が起き、この城も戦争に巻き込まれてしまいました。しかしおじいさんの息子は足を怪我していたので、戦争に行かずに済みました。」

この故事は人生何があるか分からないから、良いことが起きて浮かれたり、悪いことが起きてもクヨクヨするなよ、ととらえる人も多いと思います。今回はもう少し踏み込んで、物事の表と裏ということについて考えてみたいと思います。

 最初に、飼っていた馬が逃げたという事と、仲間の馬を連れて帰ってきたという事は、プラスとマイナスというふうに見えます。しかし、馬が逃げた直後にはそんな風には思えないですし、実際に仲間の馬を連れて帰って来るまでにタイムラグ(時間のずれ)があります。息子が落馬して怪我をした時もすぐには嘆く必要がないとは思えないでしょう。実際に戦争が始まって、周りの若者がどんどん戦争に出かけて、亡くなったり怪我をしたりするのを見て初めて落馬で怪我をしたことが幸いに転じたと思えるのでしょう。時間差はありますが、必ず物事には表と裏があることが分かります。

 以前派遣スタッフとして活躍してくれたTさん、現在は飲食業を経営されています。先日Tさんと話していた時のことです。Tさんは「私は優柔不断なんですよ」と打ち明けてくれました。優柔不断の反面は何だろうと考えてみました。私は「優柔不断ということは、他人に合わせて柔軟に対応できるってことじゃない?」と尋ねると、「確かにその通り」という返事が返ってきました。他人に合わせて柔軟な対応が出来るということは、接客を伴う仕事には重要な成功要因です。マイナス面だけを見ると「優柔不断」ですが、それが成功の要因になっていたということです。短気な人は何でもすぐに取り掛かれる人、怒りっぽい人は正義感の強い人、いい加減な人は他人に対しておおらかな人、他人の悪口を言う人はそれだけ他人のことを気にかけている人、というように物事には必ず表裏の両面があります。人生を楽しく生きている人は物事の表を見つけるのが上手な人、人生が辛い人は知らず知らず物事の裏面を探して見ている人と言えるかもしれません。