通信Vol.216(2022年5月)

新緑のまぶしい季節となってきました。ぽかぽか陽気に誘われてあちこち出かけてみたくなりますね。

 

今回は、何故企業は採用人事で学歴を取り上げるのかについて考えてみたいと思います。採用条件に高卒以上とか大卒以上という条件を掲げる企業は珍しくありません。学歴が仕事の能力とイコールのように考える人も多いと思います。ところがパナソニックの創業者である松下幸之助さんは小学校を中退していますし、本田技研を創業した本田宗一郎さんは小学校卒業です。学歴がそのまま仕事の能力に比例するなら、説明がつきません。たしかに学歴と仕事の能力(理解力や創造力)が全く関係が無いとは言いませんが、高学歴であることだけで仕事の能力を決めるには無理があるようです。

 

学歴社会も崩れつつあるとはいえ、いまだに出身校で、ある程度優劣が決まってしまう社会構造は中々崩れそうにありません。企業は一体なぜそこまで学歴や出身校の偏差値などにこだわるのでしょうか。かくゆう私も高卒で、今まで「高卒だって大卒以上に働けるぞ!」という気概で仕事に取り組んできましたし、学歴社会に一石を投じたいと思っている一人です。

 

では一体企業は学歴で何を図ろうとしているのかを考えてみたいと思います。もし貴方が上場企業の人事担当で面接をするとしたらどんな人材を採用したいでしょうか?給料分だけの無難な仕事をして、問題にぶち当たったら誰かに助けてもらおうと思っている人でしょうか?それとも色んな困難にぶち当たった時に自分で解決方法を考えたり、色々調べて乗り越えていこうとする人でしょうか?おそらく後者の人材を採用する人が多いと思います。では未来の仕事ぶりをどのように予測するのかというと、その人の過去のデータから予測するしかないのです。つまり受験勉強をどの程度やって、困難を乗り越えてきたかということを、学歴や出身校で予測するのです。受験戦争や大学で学び続けてきた人は、就職した後も仕事について色んなことから学んだり、勉強することを厭わないだろうと期待をするわけです。ここで誤解しないで欲しいのですが、学びとは受験とか資格試験の勉強のような知識の丸暗記ではなくて、仕事の効率や、トラブル解決、人材育成、知識のアップデートという実際的な頭の働き=素頭(すあたま)を鍛える学びです。受験勉強自体は知識の暗記なのですが、大学で素頭もある程度鍛えられているだろうと予測するわけです。

 

就職面接の第一関門でふるい落とされたら、後はどうあがいても仕方がないのですが、もし貴方が今いる場所で学歴下克上を狙うなら、絶対にやって欲しいことがあります。それは学び続ける努力です。講演会を聞きに行って「いい話だ」「真似したい」と思っても実際に実生活で真似をする人は講演を聞いた人の3~4%というデータもあります。その中で1年後も続けている人はさらに数人でしょう。人は現在の自分の殻からなかなか出られないのです。頭では現状を良くしたいと思っていても、心の奥底では今の自分を変えたくないのです。現状(良い状況であっても悪い状況であっても)を維持しようとする力はかなり強固なものです。

高学歴であっても、学ばない人は今いるところから成長しないし、学歴が無くても学び続ける人は必ず下克上を成し遂げます。松下幸之助さんや本田宗一郎さんが世界的企業を作り上げたように、色んな困難や誹謗中傷にめげずに学び続けること、やり続けることが大切なのです。